夏は細菌性食中毒にご用心!

カレーなど鍋に材料や調味料を加えて加熱するだけで作れる煮込み料理は、一度に大量に作ることもできるのでとても便利ですよね!でもこれからの季節、煮込み料理は食中毒を起こしやすい調理方法のひとつです。特に気温や湿度が上昇する梅雨から夏にかけては細菌による食中毒には注意が必要です!そこで今回は、夏場に食中毒が発生する原因と注意点をまとめました。

                                                

【夏に多いのは細菌性食中毒】

私たちが普段食べている食品には、常に1gあたり1000~1万個の細菌が存在しているとされていますが、食中毒のリスクが高まるのは1g当たり1000万個以上の細菌数になったときです。細菌は自分の力で増殖することができるため、栄養・水分・温度の条件が整えば食品中でどんどん増殖していきます。

つまり食品中の細菌にとっては夏場の高温多湿が最高の生育環境となるため、7月から9月にかけて食中毒が多く発生するのです。



【食中毒を引き起こす細菌】

食中毒を引き起こす代表的な細菌の特徴を紹介します。


◎カンピロバクター

家畜・ペット・野生動物などの腸管に生息しており、少量で人にも感染します。乾燥に弱く、通常の加熱調理で死滅します。

■主な原因食品:食肉(特に鶏肉)、飲料水など

■潜伏期間:2~5日

■症状:下痢、腹痛、発熱、嘔吐、倦怠感



◎ウエルシュ菌

人や動物の腸管、土壌や河川水など、自然界にごく普通に存在しています。酸素が少ない状態を好む細菌で、熱に強い殻(芽胞)をつくるため 高温でも死滅しないのが特徴です。食品中に多数付着したウエルシュ菌が体内で増殖し、芽胞を作る際に産生する「エンテロトキシン」という毒素が食中毒の原因となります。

■主な原因食品:大量調理したカレー・スープ・シチューなど

■潜伏期間:6~18時間

■症状:腹痛、水様便



◎腸管出血性大腸菌(O-157等)

大腸菌は人や動物の腸管をはじめ、自然界にごく普通に存在しています。その大腸菌の中の「腸管出血性大腸菌O-157」は病気を引き起こす細菌のひとつで、O-157を持った家畜の糞便に汚染された食肉や井戸水を通じて感染します。感染力が非常に強く、食品にごく少量(50個程度)付いていても感染します。

■主な原因食品:加熱不足の肉製品、洗浄不良の野菜など

■潜伏期間:3~5日

■症状:下痢、激しい腹痛、水様便



◎サルモネラ

鶏・牛・豚などの動物の腸管、河川・下水など自然界に広く存在しており、乾燥に強いのが特徴です。

■主な原因食品:鶏卵、食肉(特に鶏肉、牛レバー刺し)など

■潜伏期間:8~48時間

■症状:嘔吐、下痢、腹痛、発熱



◎黄色ブドウ球菌

人の喉や鼻腔、動物の皮膚や腸管、ホコリの中など至るところに存在しています。食品中で増殖するときに「エンテロトキシン」という毒素を発生させます。菌自体は熱に弱いのですが、毒素は100℃で30分の加熱でも無毒化されません。

■主な原因食品:手作りのお弁当、おむすび、調理パンなど

■潜伏期間:1~3時間

■症状:嘔吐、腹痛、下痢



◎セレウス菌

土壌や河川水など自然界に広く生息しています。熱に強い殻(芽胞)をつくることが特徴で、この芽胞は100℃で30分加熱にも失活せず、増殖する際に毒素を出します。症状には下痢型と嘔吐型の2つのタイプがあり、国内では嘔吐型が多くみられます。

■主な原因食品:米・小麦・豆・野菜などを原料とする食品

■潜伏期間:30分~5時間(嘔吐型)6~15時間(下痢型)

■症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢



◎ボツリヌス菌

土壌や河川水に広く生息しています。酸素の無いところで増え、熱に非常に強い芽胞を作ります。生後1歳未満の赤ちゃんは、ハチミツによって乳児ボツリヌス症を起こすことがあるので注意が必要です。

■主な原因食品:缶詰、びん詰、真空パック食品、発酵食品

■潜伏期間:18~48時間

■症状:めまい、視力障害、呼吸困難、えん下困難 (物が飲み込み辛くなる)、言語障害



次回は食中毒を予防するための調理方法や注意点について解説していきます!



【参考】国立感染症研究所HP


【監修】一般社団法人 神戸食品微生物科学協会

    会長 武政 二郎

 https://www.kobe-biseibutsu.or.jp/