避難行動

今回は実際に避難時の行動についてご紹介させていただきます。


◆避難行動

豪雨災害時の避難行動は主に3つに分類されます。


①緊急避難(Evacuation)

切迫した災害の危険から身を守るための避難


②退避避難(Sheltering)

災害がおさまるまでの間、長期滞在(避難生活)が可能な場所へ避難


③難民避難(Refuge)

災害後、被害が甚大で帰宅困難な人が仮設住宅で生活


この中で一番重要なのは①の緊急避難になります。差し迫る危険から命を守ることが第一です。近年ではゲリラ豪雨や集中豪雨が頻発し、自治体が適切な避難勧告をだせない場合があるため、状況に応じた避難行動を住民自らが選択・判断する必要性が求められます。

最近では、よく浸水から逃れるために2階以上へ避難する「垂直避難」が一般的に広まっています。その場合は万が一、1階から出られなくなったときに窓から脱出できるよう靴を持っていくのがオススメです。



適切な避難行動を選択・判断するには?

前回の避難所と避難場所の違い、ピクトグラムでもご紹介の通り、避難場所や避難所には災害によって避難できるかどうかの適正があります。あらかじめハザードマップ等も用いつつ、それぞれの災害での避難場所を決めておくことが大切です。また、忘れてならないのが、避難路の安全性です。2009年8月の台風9号による豪雨被害では、避難路の途中にある用水路に激流が流れ込み、避難中の4世帯12名が足をすくわれて激流にのまれてしまいました。「どの場所に避難するか」だけでなく、「その道を通るのが安全か」「比較的遠くの川が氾濫した場合の影響は?」「上流若しくは下流で氾濫した場合の影響は?」までを意識した想定を行っておきましょう。



<要配慮者の避難>

高齢者、障がい者、病弱者、乳幼児、妊婦、外国人や観光客等などの災害時要配慮者は、

・移動が困難

・情報を受けたり、伝えたりすることが困難

・薬や医療装置が必要

という特徴があり、いざという時にすぐ避難できるわけではありません。


移動時には、

・手をつなぐ

・背負う

・ひじや肩につかまってもらう

・ゆっくり歩く

・段差、階段、障害物を指差し確認し、注意を促す

・おだやかに話しかける

といった身体的・精神的な配慮をしながら避難します。



視覚障がい者

まず「お手伝いしましょうか」と声をかけ、誘導するときは杖を持っていない方の肘のあたりに触れるか腕を貸して、半歩くらい前をゆっくり歩きます。

方向を示すときは「右斜め先10m」「10時の方向」等、具体的に説明します。「こっち」「あっち」などのこそあど言葉は混乱してしまうので、NGです。



身体障がい者

その方によって必要な配慮は異なります。障害の部位や障害・傷病の基本的な対処方法(どうしてほしいか)を確認し、適した方法で誘導します。

車いすの場合は階段などの段差は4人(電動車いすは6人以上)で協力して移動させます。

階段を上がるときは前向きに、下がる時は後ろ向きにして恐怖感を与えないようにしましょう。人手が足りない場合は、要配慮者本人だけを背負う等、臨機応変に対応しましょう。



聴覚障がい者

話すときは近く寄り、相手に真っ直ぐ顔を向けて、口をはっきり大きく動かします。伝わらないようであれば、紙やペンで筆談したり、相手の手の平に指先で文字を書いたりして伝えましょう。

携帯電話のメール入力画面も有効です。



<釜石市の津波防災教育の「避難三原則」>

原則1:想定にとらわれるな

ハザードマップは未来の災害を想定したものです。必ずその通りに津波が来るとは限りません。災害の種類に応じたリスクの判断と行動を、迅速、的確に行うためには日頃から訓練が必要です。


原則2:その状況下で最善をつくせ

原則1と関連が深く、「ここまで避難すれば大丈夫」と過信してはいけません。その時の状況を見て、「最善の行動をとること」が重要です。東日本大震災の「釜石の奇跡」と呼ばれる釜石東中学校の生徒は、施設裏のがけが崩れている様子や津波が次々と家を壊していく様子を見て、当初の避難所から更に高台にある避難所へ移動することを進言しました。

当初の避難所(安全と想定された場所)は津波に呑まれましたが、彼らは変化する状況を一早く察知し、自らの命を守る行動を起こしたのです。


原則3:率先避難者たれ

人には自分は大丈夫だろうという「正常性バイアス」が働きます。また、周りの人が避難しなければ、集団心理も相まって中々「逃げる」という決断ができません。津波の場合、避難をためらうことが命取りになります。切迫した状況下で、自らが率先して避難することは簡単なことではありません。しかし、誰か一人でも勇気を出して行動を起こせば、同時に沢山の人の命を救うことができるのです。

過去の災害からの教訓、防災の知識を身に付けるとともに、いざという時に行動を起こすことの重要性も認識しましょう。


【参考】

NPO法人 日本防災士機構(2018年)「防災士教本」