避難の考え方
災害が起きた時に避難する「避難所」や「避難場所」の違いをご存知でしょうか?
また避難場所は災害の種類によって異なり、どの災害に対応できるかはピクトグラムで表示されています。
◆避難所と避難場所の違い
①避難所
災害によって住宅を失うなど、被害を受けた人や被害を受ける可能性のある方が、一定の期間避難生活をする場所。
主に公民館や小学校などの屋根がある施設で、地域防災計画の中で指定されていることが多いです。
<地域防災計画とは>
地域防災計画は、都道府県や市町村の区域について、それぞれの地域の実情に即して、地域の防災機関が防災のために行う業務などを具体的に定めた計画になります。
基本的な法体系と同じで、内閣府の中央防災会議が作成する防災基本計画に則り、作成されます。
②一時(いっとき)避難場所
延焼火災などから一時的に身を守るために避難する場所で、学校のグラウンドや公園、神社などの比較的規模の小さなオープンスペースが多いです。
③広域避難場所
地震などによる延焼火災が拡大して地域全体が危険になったときに避難します。火災の熱から身を守るため、10ha以上が必要とされています。1ha=100m×100mなので10haは100,000㎡、甲子園球場は約38,500㎡なので約2個半、東京ドームなら約2個の大きさになります。
大規模な公園や団地、大学などが該当し、大阪市中央区だと大阪城公園一帯が該当します。
◆災害種別記号
2016年に「災害種別避難誘導標識システム」JIS Z9098防災標識ガイドブックが改訂・制定されました。ピクトグラムは文字が読めなくても絵で読み取ることができます。
<ピクトグラム>
<非常口について>
普段何気なく目にしている非常口への表示も、実は色によって役割が異なります!
是非、学校や職場、デパートなどでどんな表示をされているか見てみましょう。
◆避難指示と避難勧告
災害時の避難指示、避難勧告は、災害対策基本法 第60条第1項「災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者等に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる。」に基づいて行われます。
指示や勧告は、気象庁や国土交通省の観測データ、被害状況に基づいて判断されます。どちらも被害の危険が切迫していることに変わりはなく、速やかな避難が必要ですが、避難勧告と比べ避難指示より強い呼びかけになります。現在、いずれも違反した場合の罰則はありません。
避難指示・避難勧告とは別に「自主避難の呼びかけ」もありますが、こちらは法的に規定されているものではありません。避難指示・避難勧告を発令するまでもありませんが、災害の発生が予想され、早めの対応を促すときに発表されることが多いです。
◆避難勧告等に関するガイドラインの改定
2011年の東日本大震災や2014年の伊豆大島、広島市の土砂災害の教訓を踏まえ、2017年に受け手側も含めた総合的な取り組みとしたガイドラインに変更されました。
※2021年5月25日追記
中央防災会議、防災対策実行会議下の
「令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」
からの提言(2020年3月取りまとめ)、
「令和元年台風第19号等を踏まえた避難情報及び広域避難等に関するサブワーキンググループ」からの提言(2020年12月取りまとめ)を踏まえ、
災害対策基本法が2021年に改正(災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和3年法律第30号):5月10日公布、5月20日施行)されました。
それに伴って「避難勧告等に関するガイドライン」が「避難情報に関するガイドライン」として改定されました。
避難情報の名称の変更
「避難準備」→「避難準備・高齢者等避難開始」(2017年)→「高齢者等避難」(2021年)
「避難勧告」→廃止(2021年)
「避難指示」→「避難指示(緊急)」(2017年)→「避難指示」(2021年)
「災害発生情報」→「緊急安全確保」(2021年)
従前からの規定項目の主な物
・避難は「災害から命を守るための行動」と定義。
・従来の避難所への避難だけでなく、家屋内に留まって安全を確保することも「避難行動」の一つ。
立ち退き避難:指定避難場所や近隣の高い建物等の安全な場所へ移動する避難行動
屋内安全確保:屋内にとどまる安全確保行動
避難所へ行くことだけが「避難」ではないということです。避難所でよく問題になるのは、集団感染、集団食中毒です。全員が十分に手を洗える状況ではないため、インフルエンザ等の呼吸器系感染症だけでなく、ノロウイルスや黄色ブドウ球菌等をはじめとする感染性胃腸炎が起こりやすくなってしまいます。
適切な避難行動を選択するためには、土砂災害、地震発生など家屋が倒壊する危険性を判断することが重要です。そして、避難する場合も、犯罪や上記に挙げたリスクを想定し、二次災害を防ぐことが重要です。
【参考】
内閣府HP 「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月10日):防災情報のページ」(http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/ 2021年5月21日アクセス)※2021年5月25日追記
NPO法人 日本防災士機構(2018年)「防災士教本」
内閣府HP「避難場所等の図記号の標準化の取組」(http://www.bousai.go.jp/kyoiku/zukigo/index.html 2020年10月12日アクセス)
内閣府HP「避難勧告等に関するガイドラインの改定(平成31年3月29日)」(http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/h30_hinankankoku_guideline/index.html 2020年10月16日アクセス)
大阪市HP「おおさか防災ネット 広域避難場所」(http://www.osaka-bousai.net/osaka/RefugeArea.html 2020年10月26日アクセス)
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