咲くLIFE Vol.6 植村 知佐子さん

「咲くLIFE」、6人目のゲストは、子育てと介護、仕事を両立してこられた植村知佐子さんです!

植村さんはパート社員で入社され、姿勢、人望、実行力が評価され、女性で初めての取締役として重責を担われています。

ーー早速ですが、植村さんは専業主婦から、なぜ、働こうと思われたのですか。
このまま主婦として生きるのは、時間が勿体ないと思いました。社会から離れ、子育てをしているとき、時代に取り残されているように感じていました。


ーー同じように感じている女性は多いと思います。この会社を選ばれた理由は何ですか。
生協は信頼が高く、安心して働けると思ったからです。

ーー今から当時を振り返り、これまでのキャリアに一番影響を与えた出来事について、お聞かせください。
パート社員から契約社員になったことですね。生協は組合員様よりお金を預かり、支払いが発生したときに集金をさせていただきます。当時、パート社員ながら未収金の方へお電話を差し上げる業務を任されました。私はどのような業務でも、自分に任せてもらえると仕事に身が入ります。当時部内では、組合員さまのご事情や背景を十分に伺わず、ただお振替いただく作業のようになっており、トラブルが発生していました。お客様からお𠮟りを受けるということは、こちらにも何か解決すべき課題があります。私は業務を整理し、問題を明らかにしていきました。そのような取り組みを認めていただき、今があります。

ーー当時から輝いておられたと思いますが、上司の方の選力眼に素晴らしさを感じます。入社11年で女性初の取締役にご就任され、現在では部下も300名いらっしゃいますが、正社員になられた当時のお気持ちをお聞かせいただけますか。
なぜ、私?という思いで、喜びはありませんでした。なぜなら、今の事業部で社員になる際も、遅番が必須でした。お昼に出社し、帰宅は23時です。子育てを行いながらできる業務ではありません。上司はそれでも、あなたの力が必要だと引っ張ってくれました。遅番は週に2回までにしていただくなど、お互いに条件をすり合わせてお引き受けすることにしました。


ーーご自身で新たなキャリアを築いてこられたことが、よくわかりました。植村さんは問題点を指摘し、ご自身で業務をつくっていかれているように思います。

そうかもしれません。2017年には託児所と社員食堂を作りました。コールセンターの業務は苦情をお聞きして謝るという印象から、人が好む仕事ではありません。採用が課題でした。私は、昔の自分のようにお母さんになりたての方に働いてもらおうと思い、子どもが1歳から小学生に上がるまでのお母さんが託児所に預けて働ける環境を整えました。2021年の現在では、保育士さん7名の施設長兼園長先生でもあります(笑)。

また、託児所と同年に、「カフェとまとちゃん」という社員食堂を作りました。以前の食堂は会議室のように殺風景で、お昼の休憩時間も楽しみには思えない環境でした。私たちが生涯において仕事に割く時間は、10万時間程度になるともいわれています。そう考えると、楽しんで働いてもらいたいじゃないですか。福利厚生の面から、どうしたらこの会社を選んでもらえ、私もここで働きたいと思ってもらえるのか。ということを考えています。

託児所・食堂の様子はこちらからご覧いただけます。

https://www.co-concie.com/service/welfare/



ーー植村さんのような方が役員としていていただけると、社員の方はとても安心ですし、この会社でがんばろうと思っていただけますね。これからもどんどんお仕事が増えていくように思いますが、1日のスケジュールはどうなっていますか。

例えば今日は、朝一番で社員食堂用のパンを近くのパン屋さんから仕入れます。週2回車で配達するのも私の仕事です。そのあと、各種トラブルの対応を行い、会議があります。午後は外部の業務も行いますが、私はこの外部業務は3割までと決めています。なぜなら、企業に所属している人間として、会社からの派遣として役を担い、そこで得たことを会社へフィードバックすることが一番重要だからです。3割を超えてしまうと、このフィードバックが疎かになるため、自分でバランスをとるようにしています。


ーー外部業務というとACAP(https://www.acap.or.jp/)がメインだと思いますが、貴社がACAPに参画される理由をお聞かせいただけますか。

自社だけで考えていると、視野狭窄に陥り、世間ズレしていくからです。他社さんから学ばなければいけないことが沢山あります。その最新情報を得ようと思うと、参画されていらっしゃる方々と対等に対話できなければなりません。入会するに際し、最低限の知識として消費者生活アドバイザーの資格を取得しました。


ーー植村さんのお話を伺うと、お仕事への熱い思いを節々に感じることができます。これまでのキャリアで一番嬉しかった出来事をお教えいただけますか。

託児所もカフェも私がやりたいと手を挙げました。これまで他にも沢山の提案をしてきましたが、やりたいことができるようになったときは、凄く嬉しいです。一つのことを成し遂げようと思って、すんなり行くことなんてありません。新しいことをしようと思うと、反対派がここぞとばかりに声を上げます。子どもを預かることへのリスク、飲食店という業種の運営の大変さなどです。その中で、説得させるための突破口を徹底的に考え抜きます。託児所は現在、常時15名ほどのお子さんを抱えていますが、喜ぶ従業員の顔をみると感慨深いものがあります。

お母さんはそれぞれに子育ての悩みを抱えて入社されます。当初は暗く、服装もキレイとは言えないのですが、お子さんを預けて働きだすと、みるみるうちに元気になり、そして、美しくなっていくんです。お母さんたちも、外に出たいと思っています。私はこれまでずっと現場でやってきたので、彼女たちの思いは誰よりもわかっていました。失敗したことも山ほどありますが、成功したときのやりがいは一入です。


ーー植村さんのご経験からも裏付けされることだと思います。業務を行う上で大切にされている考え方や価値観をお教えください。

子どももお母さんも同時に幸せになることです。妊娠・出産で会社を辞める方が多く、その後、お母さんたちが社会復帰できる受け皿は整えられていません。保育所に預けようと思っても、そのためには就業を証明できなければ、預けることも非常に困難な状況です。しかし、周囲に助けてくれる親御さんもいない状態では、子どもを抱えながら就職活動も行えません。

また、子どもを抱えて仕事をする女性に対して、当社もまだ十分なフォローができていません。彼女たちを制度、精神的、そして、風土で支えていくことが重要です。私の役割は、専門は消費者対応ですが、壁にぶつかった女性たちを鼓舞し、キャリア支援を行うことです。全ての問題は現場にあり、答えもまた現場にあります。

職場へご家族をお呼びし、職場見学会をした時の写真です!


ーー役員に就かれた今も、常に現場を最優先にされていることが、社員の方からの絶大なご信頼につながっているのだと確信します。最後に、こちらをご覧いただいている社会の方へメッセージをお願いします!

私は子どもが反抗期のとき、「お母さんは自分がしたいことをしてるだけやろ」と言われたことを鮮明に記憶しています。仕事第一の人生でしたので、子どもと一緒に過ごす時間もなく、宿題や連絡帳、お知らせをみるなど、十分に寄り添うことができませんでした。当時は本当に辛く、一人の母として悩み抜きました。そこで出した答えは、真剣に仕事と向き合う背中から学んでもらおうというものでした。これを幼い子にわかってもらうことは難しいですが、彼は進路を考える年齢になったとき、理解してくれました。

仕事というのは、自分一人ではできません。沢山の人の支えがあって成り立ち、その人たちに影響を与え続けなければなりません。人は想像以上に人の行動を見ているものです。人に動いてもらおうと思うと、大きな熱量が必要です。何かのせいにして手を抜き、中途半端にしてしまうと、結果も中途半端に終わります。同じ時間を使うのであれば、最高の結果を得ましょう。自分の熱量を出し惜しみすることなく、一生懸命エネルギーを注げば、見ていてくれる人が必ずいます。


一日の終わり、「出来ない言い訳を並べるより、出来る方法を探す」とご自身に言い聞かせていらっしゃるそうです。植村さんのお言葉は、志ある方々が壁にぶつかったとき、きっと背中を押してくれることと思います!