咲くLIFE Vol.5 雪 美保子さん

「咲くLIFE」、5人目のゲストは、子育てと仕事、学業を両立されてこられた雪(すずき)美保子さんです!

 雪さんは消費者市民教育研究会代表として、産学消連携の勉強会を毎月開催されていらっしゃいます。2020年度公益社団法人消費者関連専門家会議の消費者問題に関する「わたしの提言」のご入賞や、高校・大学・自治体などへ講師としてご登壇されるなど、社会志向性が非常に高く、向学心と実行力をお持ちです。

――先ず、消費生活相談員というお仕事との出会いを聞かせください。

私は兵庫県出身で、兵庫県は消費者行政が全国で一番進んでいました。小さい頃より消費生活センターが身近にありました。子育てをしながらも社会とのつながりをもち、両立できる仕事で社会貢献をしたいと思っていたころ、雑誌で消費生活相談員の募集を見つけました。消費生活相談員になるための資格の勉強をはじめると、ヒトは生まれてから死ぬまで、社会で法ルールが決められているということを知り、この仕事の面白さを感じました。


――消費生活相談員の魅力をお教えください。

消費生活相談員の仕事は、消費者の方がお困りになって、助けを求めて相談電話をされます。事業者と消費者の間で起こったトラブルについて、消費者の声を聞きます。それらは、契約のトラブルが多いです。契約したけれど、説明とは違うので解約したいという申し出に対し、交渉のアドバイスを行います。消費者は、行動することで被害回復することができます。たとえ、被害回復に繋がらなくとも、消費者は自らチャレンジするようになります。そこへ寄り添うことが私たちの役割です。消費生活相談員は、失敗したことを失敗で終わらせず、成功体験にできます。失敗を価値に変換できることに、一番の喜びを感じています。


――消費生活相談は「価値ある失敗」なのですね。とても魅力的なお仕事だと思います。広く認知いただくためにも、もう少し業務のことをお教えください。

消費者問題は事業者と消費者の間で発生する問題を扱うため、法律に従い事業者との交渉を行います。長いものは半年がかりで対応します。悪質事業者の対応を行う場合は、特定商取引法を基軸にしながら、交渉を行います。警察、銀行やクレジット会社、預金保険機構、越境消費者センターなど、問題を解決するためには、色々な機関と連携していかなければなりません。

しかし、私たちは弁護士ではないため、斡旋という柔軟な対話に重きを置いて合意形成を行います。


――現場で消費者対応を行う雪さんですが、現在、大きく問題視していることはどのようなことですか。

高齢者対応は本当に大変です。スマホの契約はできても、解約は操作が複雑で、簡単にできません。解約のための入力をスマホ上で行う必要があり、解約するために必要な資料を添付するという操作などは、高齢者にとって非常に困難です。スマホからの通信販売の他、健康食品やテレビショッピングでの被害が多く起こっています。


――コロナ禍で、家族との接触も控えなければならない今、さらに被害が拡大していくことが予想されます。まずは家族間で支援できる関係づくりが重要ではないでしょうか。雪さんがこれまでのキャリアで一番嬉しかった経験はどのようなことですか

お金に困っている人が生活の糧になるように仕事に就くと、それが悪質商法であったということがありました。斡旋を行い、いくらか返金してもらうことができました。自分の失敗を自分で乗り越えていくために、エンパワメントできたときが一番良かったと思います。


――自立支援を喜びにされている雪さんを、よく表すお話ですね。大学院へ進学された理由は何でしょうか。

子どもが就職し、子育てがひと段落した時でした。次は自分のために、やりたかったけどできなかったことをやろうと決断しました。これまで積み上げてきた、消費者問題や調停の仕事なども、まとめておきたいと思い、進学に至りました。


――大学院での研究テーマをお聞かせいただけますか。

「消費者市民教育」です。これからの担い手となる大学生が主体的に、自分たちの学びをいかに価値に変えていくことができるか。ということを研究しました。2012年に消費者教育推進法が施行され、新しい消費者教育が必要だと考えていました。


――任意団体を設立され、研究を実践に移されていると思います。今後の目標をお聞かせいただけますか。

行政の消費生活相談員は有期雇用で不安定な身分です。女性がほとんどで、子育てがひと段落し、社会復帰をしている人たちが多い職場です。専門職でありながら、不安定な立場でもあり調整弁となります。自分一人で生活を行うには難しく、担い手不足が問題です。今後長期的に、自走できるように政策面を整え、地位向上をしていきたいです。


――最後に、社会の女性へメッセージをお願いします。

過去を振り返りながら、未来の姿を考え、同じような問題意識をもった人と一緒に対話をしていきましょう。道のりは遠くとも、仲間が増えていくと人生が楽しくなると思います。


京都府立洛北高等学校附属中学校で講義を行う様子

「消費者の権利と責任-自立し行動できる消費者をめざして-」

パタゴニア京都店 3Fイベントスペース

「わたしの選択が未来を創る―着ること・食べること・生きること-」

企業・消費者・教育者・研究者など多様な主体と相互学習を行う。